新しい生まれの農作物たち
新しい生まれの農作物たち
昨月末、東京ビックサイトで施設園芸・植物工場展(GPEC)が開催されました。来場者数は3日間で約3万5千人と、主催者の予想を上回る盛況ぶりでした。東日本大震災、津波による塩害の発生により、土壌そのものが農業利用できなくなってしまった例は記憶に新しいかと思われます。また、他にも放射能による土壌汚染など、食の安全については生産者・消費者共にますます大きな関心・注目が集まっています。特にこのイベントの中で注目されたのは、植物工場です。
植物工場は野菜工場とも呼ばれ、書いて字の如く植物や野菜などの農作物を工場で生産します。植物工場の利点を安全面と将来性の大きく2つに分けてみます。安全面は、先ほどの塩害・放射能・細菌あるいは農薬汚染などの被害を被る心配がないことです。植物工場は都市部や地下でも栽培可能が利点としてクローズアップされていましたが、もはや防ぎきることが難しい自然災害や目に見えない汚染に対応できる農業と位置付けることができます。また、将来性についてですが、冨士経済の今年発表の調査によると、植物工場などの新農業システムの市場規模は2011年の697億円から、2019年には30%増の897億円規模になると予測しています。全く新しい農業形態とも言え、現在の大きな農業問題の一つでもある農業人口の高齢化(農業就業人の平均年齢は約65.8歳)・後継者不足を打破する可能性も秘めています。
逆に懸念されているのは、コスト面です。特に施設建設等の投下資金は、農産物に転化されるため一般的な露地物の野菜と比べると数十%割高なものになると言われています。すでに、2009年に農林水産省と経済産業省が総額150億円の補助金を出し、植物工場建設を促した経緯はありますが、採算ラインは未だ厳しいものです。しかし震災前から、農家の多くの土地が比較的安価だとして、植物工場立地先に東北6県・新潟県が注目されていたのも事実です(東北電力HP参照)。
早急な国からの補助金、LED光などの技術開発によるコスト面の改善がなされれば、甚大な被害を受けた東北の農家や農地などの活性化の一助にも繋がってくるでしょう。実際に、今年5月末には宮城県で6千平方メートル規模の植物工場が完成しており、今後のさらなる普及へ向けた先駆けとなっています。
人が健康に生きていくためには安全な農作物は必須です。その上で、国・民間とも植物工場は今後要注目のトピックだといえます。まだまだ聞き慣れない“植物工場産の農作物”ですが、数年後には私たちの食卓の上に当たり前のように乗っているかもしれません。
農業工場・無農薬・無公害・供給安定 |
マグロ等の養殖供給安定 |
間伐材の利用、山・川・海の再生 |
|